第16章 二匹の獣
は、普段の平静な彼からは想像出来ない先程の様子を思い返す。
雄の本能剥き出しで、身体を貪ろうとする姿。
一瞬身体を震わせると、そんなを包み込むようにアルドが腕を伸ばす。
優しく抱きしめながら、再度ヴィークに睨みを利かせた。
「ヴィーク、今のはだいぶキてたな……俺様の声も届いてなかったみたいだし。勝手に本気になりやがって」
「面目ない。様にも、改めて謝らせて下さい。謝っても許されることではありませんが」
「いえ……そんな、わたしはこういうことには慣れ……あっ、ほ、ほんとに気にしないで下さい!」
ヴィークは深々とに頭を下げる。
アルドはそんな姿に溜飲を下げ、口を開いた。
「ちゃん。ヴィークを庇う訳じゃないが、ヴィークは自分の癖や種の特性を凄く気にしててな」
聞き流してくれて構わない、と念押しし、つらつらと語る。
「初めてネックグリップをしてからずっと、ヴィークは誰の首も噛んだことがなかったんだ。というより、二度としないように女性を遠ざけた、か。兎に角それからコイツは更に堅物になっちまってな」
あまりにも開けっぴろげな自分の話にヴィークの顔が曇るも、言い返さずに俯く。
「今となっては物笑いの種にもなりませんが。これでも自分を律してきたつもりです。しかし、今回は完全に己の制御が出来なかった……」
苦々しく呟いて、唇を噛んだ。
アルドはを引き寄せ、くしゃりと笑った。
「本当にちゃんは危険だな。どいつもこいつも皆狂っちまう」
「…………」
はそんな言葉に、今までの事とこれからの事を想った。