第16章 二匹の獣
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「……こういった次第でございます」
ここに来るまでの経緯を知ったは表情を歪める。
自分が居なくともカルファもサピルーンも絶好調だな、と思いながら申し訳なさに肩を窄める。
「なんか、すみません……」
アルドが小さくなるの肩を叩く。
「なにちゃんが謝ることはない。あんなの軽い軽い! ちゃんに会う為なら何だってやるさ」
豪快に笑い飛ばし、ふと真面目な顔付きに変わる。
「それよりも……こんな所に囲い込まれちまったのが厄介だな。俺様とちゃんは別の国に住んでるからな、そう易々と手が出せないんだ」
ヴィークも深く頷く。
「それに加えて、元々アルド様は王ですから。一般国民の恋愛とは全く事情が異なります。様も、カルファ様に所有権があるという特殊な事情があります」
アルドはふーと大きく息を吐き出し、
「ちゃんを力ずくでここから出すのは簡単だ。ヴィークもいるしな」
自分の逞しい手から伸びる大きな爪を見つめる。
がちらりとヴィークに視線をやれば、宝石のような緑色の瞳が妖しく輝いた。
アルドもヴィークも、その言葉に嘘偽りない強靭な肉体と狩猟本能を併せ持っている。
娼館の黒服など容易く蹴散らせることだろう。