第16章 二匹の獣
「言うことはそれだけか? ヴィークの牙も爪も鋭いぞ、同じ猫でも兄ちゃんのモンとは比べ物にならないだろうな」
「こええ〜! おいこらサピルーン! お前助けろよ! 何やってんだよ!」
サピルーンは無表情にカルファを一瞥する。
「わたくしもお二人と利害が一致しているので……カルファ様には申し訳ございませんが、このまま様の居場所をわたくしめにも教えないのであれば、カルファ様が殺されてもやぶさかでないかなと……」
「おい!!サピルーンてめぇ解雇してやっからな!」
カルファの必死な怒鳴り声にもサピルーンは心を動かされないようで、ゆっくりと頭を垂れた。
「仰せのままに」
カルファはサピルーンの反応にげっと顔を歪める。
「様……様様様……」
首筋に迫る牙と胸に押し当てられた大きな手から伸びる爪。
ヴィークの奥に控えるアルド。
頼りの綱であるはずのサピルーンは壊れたようにの名を繰り返すのみ。
カルファはちっと舌打ちし、
「わーったよ、貧乏が今どこにいるか教えりゃいいんだろ」
渋々口を割った。
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