第16章 二匹の獣
「あいつを買ったのは俺だ。煮ようと焼こうと俺の自由だ、それをお前に一々報せる義理もない」
「……はい……」
サピルーンは頷くも、顔色が晴れることは無い。
暗い表情のまま、を探すように視線を窓にやった。
その時、屋敷の重厚なドアが開く。
「よお。久しぶりだな、兄ちゃん」
二人の視線の先には、
「アルド王……」
カルファが小さく呟く。
サピルーンも驚いた顔に変わる。
アルドの横に立ったヴィークが頭を下げる。
「お久しぶりです、カルファ様……従者様も。初めてお会いした時はご挨拶も出来ず、大変失礼致しました……今日は我が国の王が貴方にお伝えしたい事があるとの事で、こうして馳せ参じた次第です」
丁寧に述べると顔を上げ、真剣な眼差しでカルファとサピルーンを見つめる。
「単刀直入に言う」
アルドの低音の声が響く。
「ちゃんはどこだ。会いに来ても顔が見えないから心配でな」
カルファはアルドを見返し、ニヒルに笑った。