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首輪をつける

第16章 二匹の獣




が今日の相手を迎え入れようとドアを開くと、眼前に現れたのは大輪の薔薇の花束。

突き出されたそれが自分への贈り物と気が付くのにそう時間は掛からなかった。

目の前に立っている大柄な男のふさふさとした尻尾。

顔を隠すように持たれた花束からはみ出したぴんと立った三角の耳。

全身を覆う美しい被毛。

アルドは抱えた花束を横にズラして顔を見せ、

「……遅くなってすまなかった」

優しく微笑んだ。

「アルド、さ……」

懐かしい顔にの涙腺が緩む。

「アルドさん、アルドさんっ……!わたし……」

感極まり言葉に詰まるをアルドが抱きしめようとした瞬間、遠慮がちな咳払いがする。

「……お久しぶりです」

アルドの背後から現れた逞しい黒豹の男。

予期せぬヴィークの登場には慌てて身を翻し、アルドの腕から逃れた。

残念そうにするアルドと対照的に、は顔を真っ赤にし狼狽える。

「ヴィークさん……! すみませんっ!」

「いえ……」

お互いに頭を下げているとアルドが花束を脇に置き、の肩を抱き寄せる。

を見下ろし、にかっと笑う。

「二人っきりでなくて悪いな、ちゃん」

「いやっ、そういう訳じゃ……!」

「俺様はもちろん一人で会いに来るつもりだったんだぜ? 全く、逢瀬に着いて来るなんて色気が無いにも程があるぜ」
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