第14章 夢の果てまで
「その時からずっと、毎日毎日毎日毎日毎日……の事見てた。奴隷小屋に忍び込んでは、が他のおすと喋ってないか、いじめられてないか、毎日毎日毎日」
そこで思い出す。
閉塞的な日々。
絶望的な不可変の毎日に起きた異常事態。
監視の人間達が、たった一人の奴隷の反逆によって惨殺されたという。
「と会ったとき……おれまだ小さかった」
奴隷も看守も世話係もパニックに陥っていた。
檻の中で遠くから悲鳴が聞こえた。
恐らく、また一人襲われ、息絶えたことを確信させるような恐ろしい絶叫だった。
それから間を置かずに、達のいる檻の前にネアが現れたのだ。
美しい少年が床を這いずり、女奴隷達を見上げる。
真っ赤な瞳と、元の色が分からないほどに血濡れた髪。
白い肌には点々と血飛沫が付着している。
懸命に引きずる下半身まで血の色に染まっているから、余程酷く争ったことが目に取れる。
誰もが、一目で彼が脱走劇の渦中にいる殺人鬼だと分かった。
「髪……血で真っ赤になってた。からだも、血まみれ……ぜんぶぜんぶ、血でドロドロ、からだも、やっつけられて、動けない。這いつくばってしか、動けない……」
他の奴隷達が恐怖に戦き、後ずさったり、悲鳴をあげる中、は前に進み出る。
折の隙間から手を伸ばし、
「だからおれの事覚えてなくても無理ない、でもは檻の向こうから手を伸ばして」
傷付いた彼の頬を撫でた。
『逃げる道はあっちだよ。奥の扉は普段全く使われてない古い棟の非常経路で、鍵も壊れてるの』
呆然とを見るネア。
は看守同士の雑談から知り得た情報を教え、
『ここから出たら、しばらく森にでも隠れたらいいよ。多分、もうあなたの情報が街に行ってると思うから……』
彼の行く先を案ずる。