第2章 2
「紘くん・・・お前さぁ、百歩譲ってよ?百歩譲って、俺がのこと好きだったとしてよ?お前が俺にのことが好きだから、仲取り持って欲しいって言ってきたときに、俺がそれ、お前に言わないと思うの?俺が、お前に遠慮して嘘つくと思うか?」
「思わない・・・っすけど・・・ってゆーか・・・紀章さん・・・?全部バラしてますけど・・・」
紀章さんの言葉が信じられずに目を丸くする私を気まずそうに振り返った下野さんの顔と耳が真っ赤に染まっていた。
「あー?大丈夫だろ、明日になったら、何も覚えてねぇよ、こいつ。酔っぱらいだもん。」
「酔っぱらいじゃないもんっ!」
「はいはい、十分酔っぱらいだろ、オメェは」
「酔ってるけど!酔ってない!わたしだって!・・・わたしだって好きだもん!下野さんのこと!今日・・・下野さんの前であんな風に失敗して・・・情けなくて、嫌われたんじゃないかと思って怖くてたまらなかったんだもん・・・ずっと、涙堪えてたから・・・泣いちゃっただけだもん・・・」
わめきながら、自分でも訳がわからなくなってきて、涙の防壁が崩れ去っていくのを感じる。
「下野さんが・・・好きなんだもん〜!!」
わたしは泣き叫びながらテーブルに突っ伏すと、今までの緊張と情けなさに思わず声を上げて泣き出した。
「!うるさいって!ちょっとお前、場所を考えろって!」
紀章さんが、慌ててわたしの頭を揺さぶった。
わたしは、唇を噛み締めて声を堪えながらも、嗚咽を止めることはできずに肩を震わせ続けた。
そっと近づいてくる足音がして、ふわっと暖かい何かがわたしの頭に乗せられた。
「ちゃん・・・?大丈夫、嫌いになんてならないよ?俺も、紀章さんも。大丈夫。」
耳元で優しい下野さんの声が響いてくる。
涙に霞む目をそっとあげると、わたしの横に座り、真剣な目つきでわたしを覗き込む下野さんと目があった。
ちょっと照れ臭そうに下野さんがにこっと微笑んで、優しく背中をさすってくれた。
「下野さん・・・が好きです・・・」
思わずそんな言葉が口をついて出た。
わたしの記憶はそこで途切れた。