第3章 3
「わたしは・・・好きです。もう、ずっと前から・・・好きでした。でも・・・下野さんは、わたしでいいんですか?こんな情けないわたしでも・・・いいんですか?」
言いながら涙がこぼれた。
下野さんがわたしの頬に手を伸ばし、そっと涙の筋を拭ってくれる。
「俺は、ちゃんが好きなんだよ。・・・だから・・・ずっと一緒にいたい。昨日みたいに落ち込んだときは、慰めてあげたいし、抱きしめてあげたい。」
下野さんの腕が、わたしの体を包み込んだ。
その胸に顔を埋めると、下野さんは朝食の美味しそうな匂いがした。
わたしの頭をそっと撫でながら、下野さんがわたしの額にキスをくれた。
「下野さん・・・?」
「キス、してもいい?」
「・・・」
若干潤んだ色気たっぷりなその瞳に、わたしは言葉を忘れた。
下野さんの顔がゆっくりと近づいてきて、その唇がわたしのそれに優しく触れた。
ちゅっと可愛い音を響かせたあと、下野さんの顔がゆっくりと離れていく。
照れ臭そうに微笑んで、下野さんがまたわたしの頭に手を置いた。
「続きは・・・今度ふたりきりのときにね。・・・きーくん、起きてるでしょ」
下野さんの言葉に、わたしはもう一人の先輩の存在を思い出し、ばっとソファーと振り返った。
そこにはニヤニヤとわたし達を眺める紀章さんの姿があった。
「あ、バレてた?・・・いいよ?俺のことなら気にせず・・・なんなら寝てるふりしとくから、寝室にでもこもってくれば?」
紀章さんの言葉に、思わず顔が熱くなる。
「朝から何言ってんすか、紀章さん。・・・朝ごはん、できてますよ。食べるでしょ?」
「おぅ、腹減った」
「顔、洗ってきてください。ご飯食べましょ」
「はーい」
のそりとソファーから立ち上がり、紀章さんが洗面所へと向かう。
下野さんの背後を通りながら、一瞬立ち止まり、下野さんの肩越しにぽんとわたしの頭に手を乗せた。
よかったな。
そう言ってるかのように、その目は優しく瞬いた。
「紀章さん・・・」
思わず涙があふれ出た。
「あ、ちょっと、紀章さん!?泣かさないで!?触らないで!?」
下野さんがわたしを抱き寄せて紀章さんから遠ざけた。
ははっと呆れたように笑って、紀章さんが洗面所へと消えて行った。