第2章 2
居酒屋到着10分で、わたしはすでに2杯の酎ハイを飲み干していた。
「ばか、お前、ペースはえぇよ、落ち着けって!」
紀章さんが慌ててわたしを止める。
「ちゃん、お酒強いの?」
「よえぇんだって、こいつ」
「えぇ?ちょ、ちゃん?」
仲良く並んで座った先輩二人が、テーブルを挟んでオタオタとわたしを止めようとするのを見ながら、わたしは3杯目に手を伸ばした。
「ちょ、ちょっと待って、それはやめよう!」
下野さんが慌てたようにわたしの手から酎ハイを取り上げた。
「何か食べて!あ、おにぎり!おにぎり食べよう?ね?ほら、美味しいから!」
下野さんがまるで幼稚園児でも相手にしているようにわたしをなだめながら、暖かいおにぎりを握らせてくれる。
わたしは、言われるがままおにぎりにかじりつきながら無言で先輩方を見つめた。
2人は顔を見合わせつつ、わたしに心配気な視線を送っている。
そんな二人を見ながら、酔いが回り始め気が大きくなって行くのを感じた。
「・・・・紀章さん・・・」
「な、なんだよ?」
「お説教・・・しないんですか?」
わたしは、少々やけ気味にお説教を促した。
「紀章さん・・・?ちゃん・・・目座ってません・・・?」
「ヤベェな、こいつ・・・」
下野さんと紀章さんがひきつった笑顔をわたしに向ける。
「お説教、お願いします!紀章さん!」
「は?俺別にお前に説教しようと思って連れてきたわけじゃねぇし」
「・・・じゃぁどうして?」
「どうしてって・・・紘くんが・・・」
「ちょ、紀章さん?何言うつもりですか?」
何かを言いかけた紀章さんの脇腹を下野さんが慌てて突いた。
「あ、すまん」
「・・・もぉ、紀章さん・・・」
二人の仲良さげなやり取りに、なんだか嫉妬心を覚えて、わたしは拗ねながら以前から疑問に思ってたことを二人に投げかけた。