第2章 -2-
「まさき先輩!」
放課後、授業が終わるや否や、1学年下の紘が私の教室にやってくる。
部活に行くため、迎えに来てくれるのだ。
これは、毎日欠かさず続く恒例行事となりつつあり、はじめは私と彼の関係を疑い、からかっていたクラスメートも、今では完全にスルーしている。
紘と私は、付き合っているわけではない。
・・・・私は好きだったが、年下の彼にどう思われているのかわからず、この関係にヒビを入れるくらいなら・・・・と何も言わず、そのままの関係が、もう、ほぼ1年近く続いていた。
「先輩、今日は何するの?」
廊下を部室に向かって歩く私のそばを尻尾を振ってじゃれつく子犬がごとく、紘が満面の笑みでまとわりついてくる。
可愛いなぁ。
思わず微笑みが漏れる。
「そろそろ、文化祭の出し物決めないとね。練習も始めたいし、人手足りなそうなら探さないとだしさ。」
「またミュージカル?」
「もちろん!」
「えぇ〜、たまには普通の演劇やりましょうよぉ」
「うちらはミュージカルがやりたいの!」
背後から違うクラスの部員が私たちの会話に割り込んでくる。
「下野は黙ってうちらの決めたことをやればいいの!」
「部長!」
「下野は黙ってれば可愛いんだし、次の出し物も王子様とか、メインで出られるんだし、いいじゃん」
「それはだって、男子部員が足りないからでしょ?別に俺じゃなくてもいいんじゃないっすか。」
「まぁまぁ、そう言わない。下野がやりたいってゆーなら、女装してもらってもいいけど?相手役はまさきにやってもらう?」
部室に集まって来た部員にいじられ、からかわれ、ムキになって否定する紘は可愛くて、私は一歩下がった背後から紘が中心の輪を眺めていた。
「まさきせんぱ〜い!助けて、この人たちやだぁ!」
本気で拗ねた顔をした紘が私に泣きついてくる。
「もう、しょうがないなぁ・・・」
私はよしよしと彼の頭を撫でてあげた。