第3章 -3-
「紘の声、好きだなぁ。若い頃よりさ、ちょっと低くなって、でもまだ普通に高校生役までできるのとか・・本当すごいと思うし、あの時、演劇部での経験も実になってるのかなとか思うとさ、すごい嬉しいし、誇らしいなって思ってるよ。今の紘の声、私すごい好きなんだ。ラジオとかも・・・聞いてるよ。」
正直、なんだか悔しくて、こいつだけには応援してること知られたくないって思ってた。
でも実際に会って昔と変わらないこいつの顔見てたら、素直に気持ちを伝えたくなってた。
応援してるよ、頑張れって心の底から言いたくなった。
「ちょっと待って、もうやめて、これ以上は無理」
顔を覆ってた手を私の目の前に突き出して、ブンブンと降りながら私を制止する。
これ以上ないくらい顔と耳を赤くして、ついでに目も赤くして、紘が居心地悪そうに坐り直す。
「紘、泣いてるの?」
「泣いてないっ!」
帰ってきた言葉は、あの頃の紘と全く同じもので。
私は思わずクスッと笑いを漏らすと、あの時のようにそっと彼の額にキスをした。