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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第12章 【ほのぼの甘】五条先生と夏油先生


そちらにちらりと視線を配ると、久しぶりに生で見る特級呪術師二人の格闘術の応酬に、私も憂太も目を奪われる。

二人の長身を活かした軽快な身のこなし、要所に絞った的確な体術による瞬間の攻撃に目が釘付けになった。

目にも止まらぬ速さで打ち込まれる打撃、防戦するも蓄積されたダメージにより体勢を崩しそうになる相手を逃すはずもなく追撃が加わる。

無駄のない流れ、形勢逆転を狙うような洗練された戦法。それでいて相手の隙を的確に突いてくるのは流石だな。


「すごいなー……五条先生もそうだけどさ。やっぱり二人共別格だ」


純粋な賞賛で感動している様子の憂太の目には、尊敬と闘志が見え隠れする。

辛い出来事を乗り越えて呪術師として大きく成長したが、相変わらず彼は感情が顔に出やすくて分かりやすい。


「傑ー、息が上がってるよ?」

「……悟も随分お疲れに見えるけど」


二人の言葉の応酬に、会話の内容とは裏腹にどこか喜びが溢れているような気がするのは私だけだろうか。

人間ならざるスピードで夏油先生との間合いを詰めた五条先生の拳は空を切り、その腕を背後から掴みとられる。


「っ……!?」


ぐい、と五条先生の体を引き寄せながらの勢いで、今度は夏油先生の足払いが襲う。

バランスを崩して転ぶかと思われた五条先生は、難なく飛び退いて体勢を立て直している。


「傑さぁ、涼しい顔して足癖の悪いところは変わんないね」

「そういう悟も、相変わらず猿みたいに跳ねるのが得意だね」


呪力を使わない生身の戦闘とはいえ、特級同士の動きを目で追うのがやっとな私たちからすれば、目の前で繰り広げられるこの組手の応酬にはただただ圧倒される。

仕切り直すかのように拳を構える二人。

いつ終わるとも分からない予感に、遠目から見ていたパンダと棘が呆れたようにその様子を見つめていた。


「終わんねぇなこれ」

「しゃけ」

「どっちが勝つか、ジュース賭けるか?」

「俺は夏油に缶コーヒーを一本賭ける。真希は?」

「じゃあ私は最強バカに賭けるか」


夏油先生との手合わせの順番待ちをしていたはずの真希とパンダに、一年も混ざって見学するようになっていた。


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