• テキストサイズ

【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第12章 【ほのぼの甘】五条先生と夏油先生



「憂太は私と手合わせしてくれる?」


あぶれたもの同士、近くにいた憂太に私が声を掛けると、その質問が嬉しかったのか満更でもなさそうに目を輝かせた。


「も、勿論僕で良ければ……ゆめちゃん、よろしくお願いします」

「こちらこそ。じゃあ真剣の代わりに竹刀で訓練しようか」


石階段に座って見学していたからお尻が少し痛い。

よっ、と声を上げて立ち上がり、服の砂埃を手で払う。ふと、視線を感じて目を向けてみると、夏油先生とバチリと目が合う。

それはほんの一瞬の出来事だが、私の顔を見てにこりと笑いかけられたかと思えば、すぐに背を向けられてしまう。


「傑、久しぶりに素手で手合わせするか?術式も呪力強化もなしの一本勝負」


五条先生はいつもの目隠しを取り去り、楽しそうに笑って夏油先生に声をかける。


「いいね。悟が目隠しを取ったということほ……手加減抜きでもいいかな? 」


そう言葉を返す夏油先生は、どことなく張り切った声のトーンに感じる。静かな闘志を纏う先生方の周りの空気がピリつき始めた。


「……そう言えば、先生二人ってどっちが強いんだろうね?特級術師同士の対決だし、ちょっと気になる」


そんな光景を眺めつつ、私の手合わせ相手の憂太に話題を振る。

竹刀を構えたまま、僅かな隙を探り、私を見据える彼からは曖昧な答えが返ってきた。


「確かに気にはなるけど……二人とも天才って感じだし……僕は想像出来ないよ」

「ま、外野があれこれ言うもんじゃないか」


じゃり、と憂太の足元から踏みしめる音がする。

来る。その直感に、首が粟立つ。

憂太は攻撃で動く直前、ほんの少し眉間に皺が寄る。それを、私は知っている。

次の瞬間、繰り出される彼からの渾身の一撃を竹刀で受け止めて、踏み込んだ力が弱くなるタイミングで鍔迫り合いを押し返して弾いた。

一年の時とは見違えるようなその動きに、素直に感心した。

当初は腰が引けていて、一撃が中途半端。恐る恐る攻撃していたフシがある。


「憂太、全力で突っ込みすぎ。もっと動きをコンパクトにして、急所を正確に狙うことに集中」


間合いを取って体勢の整えると、向こうから歓声が上がった。恐らく、夏油先生と五条先生の手合わせが始まったのだろう。


/ 109ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp