第12章 【ほのぼの甘】五条先生と夏油先生
「さっき、先生たち自身も何か賭けて勝負になったみたいだよ。小声で何か話してた」
すっかり集中力が切れてしまい、手合わせの空気が無くなってしまった憂太が私の隣に来る。
「前みたいに、お昼ご飯どっちの奢りかどうか賭けてたとかかな?」
「えー、単純というか子供っぽいというか……懲りないね、本当」
クスリと私が笑みを零すと、「お、始まる」とパンダが声をあげる。
視線を戻すと、再び向き合った二人が同時に踏み込む。拳や足技だけではなく体術は一通りこなせる動きに、ブレや隙は無い。
間髪入れずに攻撃を繰り返してはいるが、お互いに中々決定打となる一撃を決めあぐねているようだった。
「……で、ゆめは五条派?夏油派?」
腕組みしたままパンダが問うてくる。
「え……うーん……五条先生派かな。夏油先生は何考えてるか分からない時あるから、少し苦手」
とっさの質問に、少し焦った。
ちらりと視線を向けて答えを呟くと、パンダがどこかニヤニヤした顔をしていた。
「パンダ、なにその顔」
「いや?なんでもなーい」
まるで意味深な視線と含みのある言葉に、私は怪訝な表情をしてしまった。
そんな私の顔を見るとパンダは嬉々としながらも口を閉ざした。
何となく納得いかない気持ちになっているその間にも、あの二人の手合わせに興味深々といった様子で、「五条先生ガンバー」と虎杖くん始め一年生が集まった方から声が上がっている。
しかし、それもすぐに止んでしまう。次に聞こえてきたのは、皆息を呑む音だった。
「あちゃーやっちまったな」
パンダの声で前を見ると、先生のお二方は双方の拳が頬に入ってしまった絶妙なタイミングだった。
どっちの声だか分からないけれど、「ヘブッ」と漏れた声が衝撃を物語っていた。
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