第11章 【五条/シリアス】最愛のあなたへ
今にも泣き出しそうだと思ったけれど、彼は優しく微笑むと再び私の肩口に顔を埋めた。
「このままさぁ、時間が止まればいいのにね」
そんなことを言う彼の背中に手を回して、ぎゅっと力を込めた。
彼はそれに応えるように私を抱きしめる力を強める。
そのまましばらく私たちは無言で抱き合っていた。
お互いの体温を感じながら、ただ静かに呼吸をするだけの時間が流れる。とても心地よくて、幸せだ。
「悟……そういえば、任務には行かなくていいの?」
私が尋ねると、悟は「あ〜」と面倒くさそうな声を出した。そして私の首筋にグリグリと頭を擦り付ける。
「行かなくていいでしょ」
驚いて思わず目を見開いて彼を見つめる。
特級呪術師が、任務に行きたくないと言っている。
これは一大事だと思ったけれど、彼があまりにも駄々をこねるので笑ってしまった。
「だ、ダメだよ、ちゃんと行かないと。また伊地知さんが泣いちゃう」
やんわりと咎めると、彼は顔を上げて拗ねたような表情を見せてくる。
なぜか胸の奥がきゅっとした。なんだろう、この気持ち。
「キスしよっか」
甘えてねだる悟の言葉に、私は嬉しくなって頷いた。
途端に、さっきの夢の内容が鮮明に脳裏にフラッシュバックする。
「ゆめからキスして」
と悟が催促する。
私は、彼の唇にそっと自分の唇を重ねる。温かくて柔らかい感触なのに、言い表せない違和感。
夢ではもっと生々しくてリアルだったのに、今は何故か現実味がない気がする。
いや、むしろこれが夢なのか。いや、間違いなく現実の感触がある。
唇を擦り合わせて、角度を変えるように少し顔を傾けて、もう一度押し付けるようにキスをした。
何かが違うと思ったけど、違和感の正体はわからない。
悟の舌が私の唇を舐めるので、私も応えるように口を小さく開いて舌を出す。
ぬるりと彼の舌と絡み合った瞬間、びくりと身体が跳ねた。
「ん……っ、ふ……」
いつものクセで鼻から息が抜けていく。
甘ったるい声が漏れて鳥肌が立つ。
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