第11章 【五条/シリアス】最愛のあなたへ
上顎を愛撫されると背中にゾクゾクした感覚が走った。
「ん……っ、さとる……」
「っ、はぁ……幸せ……」
やっと解放されたと思ったら、彼はそんなことを言った。しみじみと呟くものだから、何だかこっちが恥ずかしくなる。
私が黙って彼の背に腕を回すと、気を良くした恋人は更におねだりしてくる。
「ねぇ、もう一回ゆめからキスしてくんないの?」
私は言われるまま、おずおずと口付ける。
今度は、触れるだけの軽いものでも許してもらえた。
もっと濃厚なものを求められると思っていたので拍子抜けしたが、彼は満足そうに笑って私の頭を撫でる。
そして優しく抱き寄せると、耳元で囁いた。
「僕も、ゆめが死ぬ夢を見た」
その言葉にドキッとする。
どんな夢だったのかと尋ねると、彼は困ったように眉尻を下げて微笑んだ。
いつも通りのやり取りなのに、どうしてこんなに心が騒がしくなるんだろう。
漠然とした不安を振り払うように、彼の背中に腕を回して、ぎゅっと力を込めた。
そこでハッと目が覚めた。
カーテンの隙間からは光が漏れている。
のどやかに鳥がさえずっている声を聞きながら、私はベッドの上で上体を起こした。
なんだか、すごく嫌な夢だった気がする。胸のあたりがモヤモヤするし、心なしか頭が重い気がした。
隣を見ると、掛け布団からはみ出ている白髪がもぞもぞと動いていた。
悟は私と布団を間違えて抱き締めているようだったので、私は彼の髪を撫でると、その額に軽くキスをした。
すると、彼はパチリと青い目を開けた。
「おはよう」
私が言うと、彼も「おはよう」と言って微笑む。
そして私の唇にキスをした。触れるだけの優しい口付けだったけれど、心が満たされていくような気がするから不思議だ。
私はベッドから降りてカーテンを開けた。
眩しい光が差し込んでくる。今日もいい天気だ。
大きく伸びをしてからベッドを見遣ると、悟は再び目を閉じていた。
「悟、二度寝するの?」
「んん……」
彼は枕に顔を埋めたまま、曖昧に答えてくる。
私は何となく悟の髪を指で梳いたまま、彼の起床を待つ。
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