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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第10章 【五条/シリアス】大好きな君へ


一緒に冗談も言い合ったり、何気ない毎日が心地よかった。

周りの皆は僕を天才と言うけれど、天才っていうのは自分の能力を解析し、適した形で行使し、常に向上していける者のことじゃないかって思う。

生まれながらにして神に愛されているとか、人と違う何かを持っているから天才なんて言葉が出てくるわけじゃない。

僕の中で君は特別な存在だから、君が僕に向ける視線に、僕とは同じ感情が少しでも含まれていないかなんて、馬鹿な期待をするんだ。


「一週間ぶりだねぇ。出張任務のお土産ちょーだい」

「再開の挨拶がお土産催促とか、僕のことなんだと思ってるワケ?」

「え……呪術に関しては変態的に突き詰める甘党の特級術師っぽい人?」


そう冗談を言いながら、ケラケラと笑う君は僕の気持ちなんか一欠片も理解していないのを知って、少しがっかりする。


「ゆめのこと、好きだよ」

「え……」


雑談の合間に飛び出した僕の唐突な告白に、驚いて目を大きく開いてこっちを見たゆめの頬が、じわじわと赤らんでいくのが分かった。

これはもしかして脈があるかも、なんて期待してゆめの表情を見つめる。しかし、それは大きな過ちだったことに、僕はすぐに気づかされる。


「……私も悟が好きだよ。だから、ずっと友達でいてよね」


そう言って、笑って握手してくる君は、本当に嬉しそうに見えたんだ。

これはきっと、恋愛対象とか異性とか、そういう概念すらない好き。僕は、君にとっての一番親しい友達。

でも、それは絶対に僕が一番望んでいる関係ではなくて、むしろ君の特別がほしいし恋人がいい。


「僕はゆめに恋してるけど?」


ダメ押しの告白に、ゆめはやっぱり大きな目を何度も瞬かせていた。そして困ったように笑った君は言った。


「じゃあ、私の好きなところ、言える?」

「は?」


僕が聞き返して、ゆめはまた困ったように眉尻を下げる。


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