第9章 【乙骨/ほのぼの甘】幼い君の大きな愛(乙骨視点)
「こっ、これは違くて!」
「分かってるよ。憂太は大きい方のゆめが好きなんだもんな」
必死で否定する僕を見て、真希さんはクスクスと笑った。そして、動画の場面は最後の方へ。
『ゆめ、ゆうたお兄ちゃんと結婚する!』
高らかに宣言する幼女のゆめちゃんの声が部屋に響き渡る。デレデレしてる自分の姿も動画で流れて恥の上塗りだった。
ニヤニヤする真希さんの隣で、僕は恥ずかしさのあまり悶絶していた。
「わー!真希さん!もう動画止めて!」
「やだよ」
「お願いします」
「仕方ねーな」
渋々といった様子で動画を止めてくれた。よかった。これ以上は耐えられない。
「でも、どうして僕を避けるのかなぁ」
「そりゃあ、術で小さくなって記憶がなかったといえ、彼氏でもない男に抱き着いてプロポーズしたんだからな」
気まずい事この上ないだろうと、真希さんが苦笑した。確かにそうだ。普通に考えたらドン引き案件だ。
僕だって逆の立場だったら、どう反応したらいいのか分からない。むしろ、避けてしまうかも。
そう思うと、ゆめちゃんが可哀想になってくる。
やっぱり僕が悪いよね。
あんな可愛い子に好きだと言われたからって、調子に乗りすぎた。
「ゆめちゃんに謝ってこようかな」
「許してくれるかどうかは別として、謝るのはいいんじゃないか。ベタベタ触ったわけだし」
「そうだよね……」
僕は重い足取りで教室を出た。とりあえず、ゆめちゃんのスマホにメッセージを送ってみる。
《今日、時間が空いてたら話したいことがあるんだけど》
すると、すぐに既読がついた。
《いいよ。私も憂太に言いたいことがあるの》
返信内容にドキッとする。まさか、嫌われてしまったんじゃないだろうか。嫌な予感を抱きつつ、僕は待ち合わせ場所に向かった。
校舎裏にあるベンチに座っていると、程なくしてゆめちゃんがやってきた。彼女は俯きがちに僕の隣へ腰掛けた。
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