第9章 【乙骨/ほのぼの甘】幼い君の大きな愛(乙骨視点)
3人が口々に抗議し始める中、ゆめちゃんだけは不安そうな表情を浮かべていた。
ああ、そんな目で見つめられたら、僕は心底困ってしまう。
「大丈夫だよ、ゆめちゃん。心配しないで」
ゆめちゃんを安心させようと、笑顔を作ってみせる。すると彼女は、ホッとしたように頬を緩めた。
「ゆうたお兄ちゃん、だーいすき!」
そう言ってゆめちゃんは僕にしがみつくと、また頬っぺたにチュッとキスをした。
「ゆめ、ゆうたお兄ちゃんと結婚する!」
「あ、ずるいぞ、憂太!」
「おかか!」
「待ってよ、ゆめちゃん!」
突然のことに驚いて固まる僕の腕の中から、彼女は軽々と抜け出していく。
その後からパンダくんと狗巻くんが、彼女と追いかけっこを始めていた。
こうして、夢のような時間が過ぎていった。
夕方になり、遊び疲れて眠そうなゆめちゃんを医務室の家入さんに預け、名残惜しくもみんなとはお別れとなった。
「ゆうたお兄ちゃん、また遊ぼうね」
バイバーイと手を振る彼女に手を振り返しながら、解散した。
もう二度とこの楽園を味わえないだろうと思うけど、いつも手厳しいゆめちゃんの子供の頃の姿を堪能出来て幸せだった。
翌日。
ゆめちゃんは術も解け、いつもと同じ年齢に戻っていた。だけど、なぜか彼女に避けられているような気がしてならない。
目が合う度にサッと逸らされるし、廊下ですれ違っても挨拶だけで必要最低限しか喋ってくれなかった。
何でだろうと悩みながら教室に向かうと、そこでは真希さんがスマホをいじっていた。
僕はチャンスだと思い、思い切って尋ねてみた。
「真希さん……僕、ゆめちゃんに避けられているんだけど、何かあった?」
そう言うと真希さんは一瞬目を丸くした後、フイッと顔を背けて笑いを堪えていた。
「報告書を書かなきゃいけないから、朝一でゆめにこれ見せたんだよ」
真希さんのスマホを見ると、いつの間に撮っていたのか、昨日の動画が再生された。それは、僕がゆめちゃんにキスをされている場面。
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