第9章 【乙骨/ほのぼの甘】幼い君の大きな愛(乙骨視点)
「結局、パンダくんは今は何役なの?」
「んー、ペットの犬タロウ」
「あ、やっぱり犬なんだね」
「まぁな。ちなみにパンダで犬なのは、パンダみたいな犬って意味じゃないぞ。パンダの中のパンダが犬になったって意味だからな」
「え、ハイレベルすぎて不可解だよ」
パンダ界の頂点を極めたパンダが、ゆめちゃんというご主人様の犬に成り下がったという意味なのだろうか。謎すぎる。
僕が頭を抱えていると、今度は狗巻くんが近づいてきて、ゆめちゃんに話しかけた。
「いくら、こんぶ?」
「いぬまきお兄ちゃんはねぇ、ゆうたお兄ちゃんの親友なんだよ」
親友かぁ。なんだか照れくさいけど嬉しい。狗巻くんも同じ気持ちだったのか、いつもより表情が明るい気がする。
「ゆーたお兄ちゃん」
「うん」
ゆめちゃんは隣に腰掛けた僕の膝に移動してきて、嬉しそうに胸に頬擦りをする。その愛らしさに思わずキュンとする。
「ゆーたお兄ちゃん、いいにおいがするぅ」
「そっか。ゆめちゃんもいい匂いだよ」
「ゆうたお兄ちゃん、だっこ、ぎゅっ」
「うん」
ゆめちゃんのリクエストに応えて抱き上げて、上体を傾けて抱きしめると、僕の首に細い両腕が回されて、ゆめちゃんは僕の首元に顔を近づけてスンスンと匂いを嗅ぎ始めた。
僕も負けじとゆめちゃんの首元に顔を埋めると、柔らかな彼女の小さな身体からは、甘い香りが漂ってきた。
幸せだ。こんなに可愛い女の子とイチャイチャできるなんて。
しかもみんなも、ゆめちゃんが天使だからみんなデレデレしている。これはこれで悪くないかもしれない。
「おい、憂太。あんまりゆめにベタベタすんじゃねーよ。こいつ子供なんだからな」
真希さんの言葉にハッとして顔を上げると、全員から白い目を向けられていた。しまった。
つい調子に乗ってしまい、幼児趣味の男だと勘違いされてしまったかもしれない。
「ち、違うよ!そういうつもりじゃ……」
慌てて弁解しようとするも、誰も聞いてくれない。
「しゃけ、いくら」
「そうだな。ゆめは私の娘だから、憂太には渡せないな」
「ツナマヨ」
「ゆーたお兄ちゃん……?」
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