第9章 【乙骨/ほのぼの甘】幼い君の大きな愛(乙骨視点)
「だ、ダメじゃないよ!」
慌てて否定すると、ゆめちゃんはパァァァァァァァァッという効果音が聞こえてきそうなほど、満面の笑みを浮かべた。
あ、ダメだ。可愛くて昇天しそうだ。
思わず鼻血が出そうになったところで、ふいにゆめちゃんが後ろから誰かに抱きつかれる。そこには真希さんがいた。
小さな肩越しに顔を出すと、そのままゆめちゃんに向かって声をかける。
「おい、ゆめ。それなら私はどうなるんだ?」
「真希ママはねぇ、ゆーたお兄ちゃんのお姉ちゃんなのぉ」
設定がまた変わった。真希さんは僕のお姉さんらしい。
「おー、そうかそうか。それじゃあ私のことは真希お姉ちゃんって呼べ」
「まきおねえちゃん?」
「ああ、よくできたな」
頭を撫でられて嬉しそうに笑うゆめちゃんを、真希さんは優しい眼差しで見ている。さすがお姉ちゃん。ままごととはいえ、妹への愛情が溢れている。
そのうち降りたいとゆめちゃんが言い出したので、床にゆっくり降ろそうとしたら、ピョンと僕の腕から飛び降りたので焦った。
彼女は全力で椅子にのぼってから、テーブルのスプーンを掴んで僕に差し出してくる。
「はい、スプーン。ゆうたお兄ちゃん」
「ん?」
「ゆーたお兄ちゃんのオムライス、ゆめにちょーだい?」
そう言うと、ゆめちゃんは小さな口を開けて待っている。僕は思わず目を見開いて固まってしまった。
だって、その仕草はまるでキスをせがんでいるようで、可愛いすぎてヤバい。
待っている時の顔が見たくて、その後の僕は、何度かオムライスをゆめちゃんに食べさせることになった。
「パンダお兄ちゃん、はい」
「ん、サンキュー」
満腹になったゆめちゃんは、スプーンでオムライスを掬うと、それをパンダくんに差し出した。
パンダくんはそれを口に含むと、「美味い!」と言いながら彼女の髪を優しく撫でる。その様子を見ながら、ふと疑問が湧く。
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