第9章 【乙骨/ほのぼの甘】幼い君の大きな愛(乙骨視点)
これはいったいどういうことなんだろう。
犬のタロウが「うめぇ」とか言ってるし、真希さんは継母だろうと狗巻くんが言ってて設定がカオス。
「ゆ、ゆうたお兄ちゃん……」
困った様子のゆめちゃんが僕を見上げてくる。ああ、本当に天使だ。思わず頬が緩んでしまう。
「大丈夫だよ、ゆめちゃん。ほら、みんな仲良しだよ」
僕の言葉に、ゆめちゃんがホッとしたように笑顔になる。ああ、この笑顔だけで僕は幸せだ。あとオムライス3皿はいける。
「ゆうたお兄ちゃん、だっこ」
「え?う、うん……」
椅子から降り、走り寄ってきたゆめちゃんを抱き上げると、彼女はぎゅっと首元にしがみついてきた。
子供特有の甘い匂いと温かさにドキドキするけど、不思議と嫌じゃない。むしろこのままずっと抱きしめていたくなる。
なんで憂太だけなんだ、と。狗巻くんは隣で少しガッカリしていた。
「ゆめちゃん、軽いね。羽みたいだよ」
「しゃけ!ツナマヨ、こんぶ?」
「え?あ、狗巻くん失礼な。変なとこ触ったりしないよ」
「えへへ!ゆめうれしい!ねぇねぇ、ゆうたお兄ちゃん、もっとぎゅってして?」
「え……あ、う、うん……こうかな?」
甘えた声で言われ、恐る恐る腕の力を強めると、ゆめちゃんはキャッキャ笑いながら「もっと!」と言ってきた。
何これ天国。可愛い。ぎゅっとする度に彼女の笑顔が溢れる。
「ゆーたお兄ちゃん、だいすき!」
「ぼっ……僕もゆめちゃんのこと大好きだよ」
「ゆうたお兄ちゃん、ちゅっ!」
「はわっ……!?」
突然、ほっぺたに柔らかい感触がしたと思ったら、目の前には真っ赤になったゆめちゃんの顔があった。
「ゆーたお兄ちゃん、わたしのおよめさんになってくれる?」
「お、お嫁さん……!?」
「だめ……?」
不安そうな表情で見上げられ、心臓を撃ち抜かれたような衝撃を受ける。
いや、僕がお婿さんじゃなくてお嫁さんなのかとツッコミたいところだけど、そんなことはもうどうでも良かった。
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