第9章 【乙骨/ほのぼの甘】幼い君の大きな愛(乙骨視点)
「よし、それじゃあおままごとの始まりだ!」
パンダくんの合図で、ゆめちゃんのおままごとに付き合うことになった。
最初は普通の家族ごっこだったはずなのに、気がついた時にはなぜか配役が増えていた。
僕はゆめちゃんのパパ。
真希さんはゆめちゃんのママ。
狗巻くんはゆめちゃんの弟。
そして、パンダくんはペットの犬のタロウだった。
パンダなのに犬とはこれ如何に。
「パパぁ、ごはんできたよぉ」
「ありがとう。今日のご飯は何だい?」
「えへへ、オムライスですぅ」
ゆめちゃんは嬉しそうに笑うと、寮のキッチンを借りて真希さんや狗巻くんと作ったオムライスを、皿に盛り付けてテーブルに置いた。
今の僕たち、おままごとしてる筈なんだけど、いつの間にやら実生活に反映されている。
「いただきまぁす」
ゆめちゃんはそう言うと、スプーンを手に取ってオムライスを食べ始める。
うん、口の周りに付くケチャップを拭ってあげたくなる。ポロポロ落ちるご飯もご愛嬌。そんな様子を見ながら、僕もスプーンを手に持つ。
「ゆーたお兄ちゃん、おいしい?」
「美味しいよ。ゆめちゃんの作った料理なら何でも美味しい」
思わず本音を口にしたら、「ゆうたお兄ちゃん、大好きぃ!」と言われて抱きつかれた。こんなに喜んでもらえるなんて、嬉しいなぁ。
僕はゆめちゃんのパパさんの設定なのに、お兄ちゃん呼びになっているのがまた可愛い。
「わんわん」
2足歩行の犬のタロウ……ではなく、パンダくんがお尻を振りながら、ドヤ顔で僕たちの前をノリノリで歩き回る。自分は愛されるペットだとアピールしたいのだろうか。
「パンダお兄ちゃん、はい、あーん」
ゆめちゃんがオムライスを一口分掬って差し出すと、パンダくんはパカッと口を開けた。その光景はまるで餌付けされているみたいで、なんだか可愛くて笑いそうになる。
「んー、うめぇ!やっぱり可愛い女の子が作った飯が一番うまいわー」
「そうだろ、ゆめは私の娘だからな。私が育てた」
「おかか!いくら、明太子」
「はぁ?何言ってんだよ!ゆめは私の娘だろうが」
いつの間にか喧嘩を始めた同級生に、思わず唖然としてしまう。
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