第9章 【乙骨/ほのぼの甘】幼い君の大きな愛(乙骨視点)
パンダくんが「ゆめちゃーん、これは憂太お兄ちゃんだよ」とおふざけ半分でゆめちゃんに紹介している。
彼女はこちらをチラチラ見ながら神妙に頷いている。
「ゆうたお兄ちゃん!こんにちわぁ」
「こ、こんにちは……」
パァッと目が輝いた、満面の笑みが眩しい。
子供特有のハキハキした高い声で挨拶されて、幼女パワーに圧されて思わず頬が熱くなる。ゆめちゃん、本当に天使みたいだ。
一瞬、僕は息をするのを忘れてしまった。
しゃがみ込んで、視線を合わせて手を差し出すと、小さくて体温が高い手が、ぎゅっと僕の手を握りしめたのだ。
ふにふにと柔らかくて温かな感触に、心臓が壊れそうなほど脈打っている。
「ゆうたお兄ちゃんの手、大きいね!ねぇねぇ、もっと遊んで?」
「あ、遊ぶ!?」
まさかの言葉に驚いているうちに、今度は反対の腕をぐいっと引かれる。そこには目を輝かせた狗巻くんがいた。
「しゃけっ」
「え、何するの?」
戸惑う僕を無視して、狗巻くんは僕の手を掴むと走り出そうとグイグイ引っ張られる。立ち上がって慌てて振り返ると、真希さんもパンダくんもゆめちゃんも楽しそうな様子で、付いて来る雰囲気。
今日はもう任務に行けないので、解散ということで良いと五条先生からもメッセージが届いていた。
ああ、もうこれ遊ぶしかないよね。絶対楽しい予感しかしない。
こうして僕たちは、とりあえず高専の教室から廊下へと出た。
「ゆめちゃん、何して遊ぶ?」
「ん~とねぇ、おままごと!」
即答だった。反応の早さに、さすがにちょっとびっくりしていると、ゆめちゃんは不思議そうに首を傾げる。
それから少し考えるように俯いて、パッと顔を上げたと思ったら満面の笑みを浮かべていた。
「あのね、ゆうたお兄ちゃんはパパ役やってくれる?」
「ぱっ……パァッ!?」
「お、いいな。じゃあ俺はママやるぞ」
「ツナマヨォ」
パンダくんもノリノリでママ役を立候補すると、真希さんがすかさず「ゆめのママは私だからダメだ」と言ってくる。
皆が張り切っている、なんだか微笑ましいやりとりに、思わず笑ってしまった。
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