第9章 【乙骨/ほのぼの甘】幼い君の大きな愛(乙骨視点)
思わず、刀を仕舞っていたケースが肩からずり落ちそうになった。
「……憂太、驚くなよ?」
「え、え、どういうこと?」
単独任務から帰還した僕の目の前には、信じられない光景が広がっていた。
頬をポリポリ搔きながら苦笑するパンダくんに抱えられているのは、3歳くらいの子供の姿になったゆめちゃん。
そしてその横に並んでいる真希さんと狗巻くんも、なぜか小学生くらいの身長になっていたのだ。
「パパ、パッ、パンダくん!ど、どうなってるの?!」
「落ち着けよ、憂太。だから言ったろ、驚くなよって」
取り乱した僕に向けられた真希さんの呆れた声も、華麗に耳をすり抜けていく。
だってこんなの、驚くなという方が無理だ。
「すじこ……」
「ホント、なんで私まで……」
狗巻くんと真希さんは本気で落ち込んでいるみたいだけど、僕は思わず3人の姿に見入ってしまう。
子供の頃のゆめちゃんって、こんな感じだったんだ。控えめに言って、最高に可愛い。天使の輪っかが輝く髪の毛に、くりんとしたお目目。
不安そうに胸元の服を握りしめてモジモジしている。
いつも真希さんに負けないくらいに、バッサバッサと呪霊をなぎ倒す彼女がこんな姿になるなんて、誰が想像出来たであろうか。
好きな人の子供の頃の姿を見ることが出来た歓喜で見入っていると、ゆめちゃんはキョロキョロしながらパンダくんにしがみついていて、それを見た真希さんと狗巻くんも顔がニヤけている。
「任務で対峙した呪詛師の術式でな、3人とも年齢逆行……つまり、真希と棘は5歳若返ったんだよ。ゆめは術式モロに食らって、10歳以上若返りで一時的な記憶喪失。悟の話では、一日経てば元に戻るらしいから安心しろ」
「そっか……よかったぁ」
パンダくんの説明に、僕はホッとして胸を撫で下ろす。それにしても、僕だけ単独任務だったのが悔やまれる。みんな一緒の任務なら、こんなことにはならなかったかもしれないのに。
そんなことを考えていると、不意に下から服を掴まれた。視線を下げると、いつの間にか隣に来ていたゆめちゃんが、じっと僕の目を見上げてくる。
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