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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第8章 【乙骨/甘】微熱



クリスマスっぽいデートコースの提案に嬉しくなって、彼の手を握って早く早くと引っ張る。


「じゃあ早く行こうよ」

「うん、ゆめちゃんと行くの楽しみにしてたんだ」


私が思わずはしゃぐと、憂太は優しく笑った。

繋いだ手に力を込めると、同じように握り返してくれる。そんな些細なことが幸せすぎて泣きそうになる。


「……憂太、メリークリスマス!」


歩きながら満面の笑顔で私が言うと、彼もまた微笑み返してくれた。


「わぁ!憂太見て!こんな風にライトアップされるんだね!」

「そうだね。綺麗だよね」


ここから少し歩いたところにある広場には大きなツリーがあり、それを囲むようにしてたくさんの電球が取り付けられていた。

オレンジや黄色、部分的にピンクや青の電球でキラキラ輝く光を見つめていると、心が温かくなっていくような気がする。

スマホを構えてツリーを背景に二人で写真を撮り終えると、今度はツリーを眺めながら憂太に寄り添った。

チラッと視線を送り、さり気なく彼の指に私の指を引っ掛けると、自然に指を絡めて手を繋いでくれる。


「うーん……分かっていたけど、すごい人混みだね」


そう言いながらも、楽しげに笑う憂太の横顔に見惚れてしまう。

本当に格好良い。背も高いし、優しいし、強いし……非の打ち所がないとはまさにこのことだと思った。

そんな彼が恋人になってくれて、こうして一緒に過ごしてくれていることが奇跡のように思えた。


「ゆめちゃん?」


不思議そうに声をかけられてハッとする。いけない、彼を見つめてボーッとしてしまった。


「なんでもないよ!あっ、あっちにも何かあるみたい!」


誤魔化すように笑いかけると、私たちはその場を離れて別の場所へと移動することにした。

しばらく歩くと大きな公園と噴水があって、噴水の水面に映るイルミネーションがとても幻想的だった。

周りにいる人たちと同じように立ち止まって見入っていると、突然体を抱き寄せられた。

驚いて顔を上げたと同時に、耳元で憂太に吐息混じりに囁かれる。


「キスしていいかな」


その言葉を聞いた瞬間、痺れのように、ぞわりと身体の奥底から震えるような感覚に襲われて動けなくなった。


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