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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第8章 【乙骨/甘】微熱



クリスマスイブ。

多くの人が賑わう町中で、私と恋人の憂太は夜にデートの約束をしていた。

お小遣い稼ぎのケーキ販売のバイトのノルマを終えた私は、制服であるサンタの衣装を着たままコートを羽織り、待ち合わせ場所に着いた憂太の背後からバッと抱きついた。


「へっ?」


驚いて声になっていない彼から離れ、赤いスカートを両手で広げて目の前に登場すると、憂太が更に目を丸くした。


「憂太、どう?」

「ゆめちゃん、可愛い」

「えぇー……それだけ?」

「え、あ……う、えっと……」


髪もメイクも、いつもと違って大人っぽく仕上げてお姉さん風にしてみたので、彼がどんな反応がするのか楽しみだった。

私の顔をチラッと見て、少しだけ困ったように眉を寄せて頬を掻くと、憂太は照れくさそうに笑った。


「すごく似合ってるよ……なんかゆめちゃんが綺麗で照れちゃった」

「んふっ……!」


想像以上に憂太がモジモジとするので、思わず吹き出してしまった。

そんな私を見て、憂太が恥ずかしそうに目を逸らす。

その様子が可愛らしくて愛おしくて堪らなくて、私は再び彼に抱きついた。


「ありがと!大好き!」


公衆の面前で、彼の着ているコートごとギュッと抱き締めると、憂太が慌てふためいた。


「うわぁ!?ちょ、ちょっと待ってゆめちゃん、ここ外だから!」


私を引き剥がそうとする憂太を無視して、彼の腕にしがみついたまま、イルミネーションが彩る歩道を歩き出した。


「ほら早く行こ!ケーキ予約してあるんでしょ?今夜は楽しもうよ」

「いやあの……僕、明日の朝早いんだけど」

「憂太、嫌って言っても、朝まで寝かさないぜ……!」

「ゆめちゃん、何言ってんだよもう」


彼と腕を組んだまま見上げ、わざとらしいキメ顔で憂太を口説く。

顔を真っ赤にして焦っている憂太の腕に、私の腕を絡めて更に密着すると、彼は観念したのか、抵抗していた腕から力を抜いた。

そのまま二人寄り添って歩き出す。


「そういえば……憂太は行きたいところがあるって今朝言ってたけど、どこ行くの?」

「駅前にあるイルミネーション観に行こうかなって。そこ行ってからケーキ受け取って帰る感じでいいかなと思ってたけど……」


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