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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第7章 【五条/シリアス】哀情-Answer-(五条視点)



流石に完全に日が落ちると、12月終わりの寒さが身体に応える。

コートを取りに部屋へ戻る途中、医務室の灯りが目の端に留まる。

今夜は夜通し関係者が動いている。

事件の報告やら、役所に提出する爆発の事故扱いの捏造書類やら、校舎再建に向けた瓦礫の撤去やらがスピーディーに行われるらしい。

帳が途中で消えたお陰で、一般人から爆発の通報を警察が受けたらしく、学長が事情を話していた。

その間も補助監督が忙しく駆け回り、瓦礫撤去のための重機を乗り付けた業者が集まってきている。


「後でゆめの顔でも見に行くかな」


疲れた時には、甘味摂取とゆめを抱きしめるに限る。

夜通し働いて、一時休憩に入った明け方。

彼女の呪力から居場所を探って会いに行き、声を掛けた。


「ゆめ、風邪ひくよ」


外は冷えるというのに、コートも羽織らずに薄着で建物の屋上に居た彼女を心配して抱きしめると、優しいゆめは、傷心の僕の代わりに涙を流した。

会いに来るまで憂鬱で気分が沈んでいたが、鼻水まで垂らして泣き顔を晒したゆめに、逆に笑いが込み上げてきて、ティッシュを渡しながらも微笑ましい気持ちになった。

この女性が、たまらなく愛おしい。


「ゆめには笑っててほしい」


口をついて出るその言葉は、紛れもなく本音。

親友を殺めることでしか、終幕を迎えることが出来なかったのは僕の罪だ。

彼女にはなるべく心配も負担もかけさせたくない。


「ゆめ、帰ったらゆっくり眠らせて」


願わくば、君の体温を、匂いを感じて眠っている間はすべてを忘れたい。


「ゆめのこと抱きしめて寝ていい?」


大切なものは、もう何一つ失いたくはない。腕に抱いて、確かめていたい。


「ゆめも休んでよ」


頑張り屋の恋人は、僕が休まなければ、他に何か自分にできることはないかと頭をフル回転させながら、せっせと動き回るタイプだ。

はらはらと涙を流しながら、ゆめは僕のお願いの言葉すべてに頷いてくれる。

本当に僕には勿体ないくらいの女性だと思う。


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