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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第7章 【五条/シリアス】哀情-Answer-(五条視点)



お互いに何も言わずとも、心境は解ってしまう。


「……高専に硝子とゆめが向かっている」


生存者がいないか軽く見て回っておいてくれと学長から言われ、併せて、現場保存のために1級術師と上層部も高専に向かっていることも伝えられた。

事務的なやり取りをして、電話を切ったあと、


「悪いね、あとで迎えに来るからさ」


穏やかな笑みを浮かべたまま、物言わぬ親友に語りかけて肩をポンポンと叩き、憂太たちの元へと向かうために、重だるい足をパンッと叩いて立ち上がる。

それから、里香の解呪を見届け、治療のために生徒たちを預け、現場検証を行った。

無表情でこちらへ歩いてきた硝子は視線だけで現状を聞かせろと言ってくる。傑を術式を使って始末したことを伝えると、


「五条、夏油は検死に回すか?」


と、ひどく冷静な声で返された。


「いや、他のやつに任せるさ。ひどい有様なんだ。今回の件だけはオマエに処理はさせたくない」

「……そうか」


これは僕の勝手な配慮だ。

いくら医師として死体を見慣れていても、彼女も傑と僕と、学生の頃の馬鹿なノリで楽しい時を過ごした一人だ。

せめて、旧友として、あの時のままの傑の姿を記憶に残しておいて欲しい。すでに他の医師へ検死を依頼した。

少し離れたところで、硝子の医療道具が入った黒鞄を持ちながら、恋人のゆめは呆然とした表情で、損壊した高専を眺めていた。

近寄って、ゆめの頭に優しく手を乗っける。ハッとした様子で、勢いよく僕の方を見ると、


「悟、お疲れ……さ、ま……」


と、彼女は青白い顔で涙ぐんで、抱えている鞄を胸元で抱きしめていた。

特級呪詛師の所業と僕がしたことを耳にして、自分だってショックを受けているだろうに、彼女の口から出るのはいつだって誰かを労る言葉だ。


「さて、仕事をするか」


徐ろに硝子が呟き、腰に手を当てた。

怪我人の手当をするからと僕に告げて手を振り、硝子が歩き出すと、後ろからゆめが小走りで付いていく。

チラッと恋人に視線を送ると、彼女も見つめ返して微かに笑ってくれた。 

小一時間ほど状況を上層部に聞かれ、名残惜しいが傑の遺体を引き渡す。

他の医師へ移送されるため、粛々と白い布で包まれる親友を横で見ているしか出来ない。


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