第6章 【パンダ/ほのぼの甘】依依恋恋
新たに一人、初めて聞く名前の人がいたが、きっと仲が良い人なんだろう。
「ねぇねぇ、パンダくん」
手を招くようにジェスチャーで彼に屈むように伝える。
内緒話か何かと思われたのか、彼が頭を傾けてきた。腕を回して抱きしめ、そのほっぺたにすかさず唇を押し付けて、数秒してから離れる。
顔の柔らかな毛の感触を口唇に残したまま、彼の体に顔を埋めると、パンダくんの大きな体が明らかに動揺した。
「ゆめ、誰かに見られたら……」
「誰かに見られてもいいよ」
誰に見られても、胸を張って「この人が好きだ」と言える。胸いっぱいになった、彼を好きな気持ちが溢れて出てしまう。
しょうがないな、というニュアンスが感じられる溜め息を吐きながらも、抱きつく私の背中を彼の手がさすってくれる。
「ゆめって意外と積極的だよな」
パンダくんが笑うと、彼の体も一緒に搖れる。
「パンダくんのこと大好きだから」
どう伝えたら、彼にこの想いをすべて分かってもらえるだろうか。
彼にくっついていると熱くなる頬も、ドキドキして手が震えてしまうこの瞬間も、彼にもっと触れて欲しいと思ってしまうこの欲も、「恋」じゃなかったらなんだというのか。
さりげなくパンダくんの手が私の髪を撫でてくれるだけで、胸が幸せで満たされる。
「大好きなの」
すりすり、と頬を彼の体に擦り寄せた時だった。
カシャリ、とカメラ音がどこからか鳴った。それに気付いたパンダくんが、音がした方向に向けてすかさず声を荒げた。
「ちょ、まっ……悟!それ消せ!」
「いやー、青春だね!」
聞こえた第三者の声に思わず私が体を離すと、スマホを構えた男性が私達の前に立っていた。
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