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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第6章 【パンダ/ほのぼの甘】依依恋恋



パンダくんだけでなく、私のことも慮(おもんぱか)る情の深い人だ。

パンダくんが人に優しくできる理由が分かった気がした。この人の手によって命を吹き込まれたからだ。

間違いなく、パンダくんは夜蛾さんの息子さんだ。

認めてくれた父親の姿に、パンダくんも言葉にならない様子で見つめている。


「夜蛾さん……ありがとうございます」


どう言葉を返したら正解だったのか。

ただ、私の気持ちと2人の関係を頭ごなしに否定しなかった心遣いに、まず私はお礼を述べて頭を下げた。

言葉の意図を汲み取ってくれた夜蛾さんが顔を上げ、無言で頷いてくれた。


「私は店を継ぐ修行中の身で、息子さんや夜蛾さんには心配をかけることもあると思います。まだまだ未熟で至らぬ点もありますが、これからもよろしくお願いします」


2人の関係が許されるのであれぼ、どうか見守っていてほしい。その願いを込め、私から再度頭を下げた。

そして、厳かな雰囲気の中、解散となった。夜蛾さんのいる部屋を出るまで、パンダくんは一言も話さなかった。


「俺さ、まさみちに怒られると思ってた」


正門まで送ってもらう途中、パンダくんがポツリと本音をこぼした。どうして怒られると思ったのか彼に聞いてみると、


「呪骸のくせにゆめをたぶらかしたのかって言われるかと思ってヒヤヒヤした」


やっと息が吸えたと言わんばかりに深呼吸を繰り返しながら返答する彼に、笑いがこみ上げる。

やっぱり普通の父と息子のように、パンダくんもお父さんに怒られるのは恐いのね。


「あはは、どっちかというと合否の判定受けたの私じゃない?」


交際相手の親に呼び出しをくらい、かつてないくらいに肝を冷やしたのはこっちだった。

緊張が解けてブラブラしてる彼の手を取って、ギュッと握りながら私も笑う。

なんとなく手を繋いだまま、正門までの石畳や玉砂利を2人で並んでゆっくりと歩いていく。もうすぐ空がオレンジ色に染まりそうだ。


「高専内だったらパンダくんと安全にデートできそうだね」

「やめとけ、やめとけ。誰かに見つかったら冷やかされるぞ。特に悟、真希、棘の悪ノリ度合いは最悪だ」


手をヒラヒラさせながら謗(そし)るパンダくんだが、その顔は楽しそうだ。


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