第6章 【パンダ/ほのぼの甘】依依恋恋
「しゃけってYESで、おかかはNOっぽい返事?」
棘くんが眉をキリッとして親指を立て、「しゃけ」って返してきたので合ってるのかな。
パンダくんは初日から理解するなんてすごいと褒めてくれたけど、他の具が全く分からないよ。
今度パンダくんに棘くん語録と翻訳表でも書いて貰おうかな。
私が布製品やその他部品の納品で来る時は裏側の業者用の入り口を通る。
あまり意識してなかったが、高専の正門前まで来ると、その規模に改めて目がまるくなった。
古びた木製の銘板に「東京都立呪術高等専門学校」と彫ってあるのを見ると、歴史がある教育機関なのだと実感する。
「ゆめはいつも納品で来る時は業者用の門通るから、こっちは初めてだよな」
感嘆の声があがっている私を横目に、パンダくんと棘くんが正門からの案内をしてくれる。
校舎に続く石畳の途中、棘くんは寮に戻ると言うので、2人で彼を見送った。
「高菜〜」
棘くんに手を振り返しながら、高菜は「大丈夫」的な意味なのかなと考えつつ、パンダくんの後ろについて歩いていく。
「この時間、いつも通りならこっちで呪骸と組み手してるだろうな」
彼はそう言って、校舎へ行く道から外れて小規模の建物へ入っていく。
重めの鉄のドアを開けて中に入ると、小さな道場のようなところへ着いた。その部屋の中心で、壊れた人形の腕を直す黒服にサングラスの厳つい男性が一人。その姿を認めた瞬間、背筋が伸びる。
「まさみち」
パンダくんが呼ぶと、その人は振り返る。呪術高専の学長の夜蛾さんだ。
「お久しぶりです」
私が挨拶をして頭を下げると、
「少し、待ってくれ。派手に訓練しすぎてキャシィの腕が取れてしまってな」
そう言いながらも手は止めず、手際よく人形さんの腕を縫っている。
キャシィはあのカッパに似た呪骸の名前な、とコソコソとパンダくんが教えてくれる。まさか呪骸1個ずつに名前あるのかと衝撃を受ける。
修繕を終え、キャシィちゃんが跳んだり跳ねたりしているのを見届け、満足そうに夜蛾さんが頷いていた。
「さて」
私とパンダくんは、夜蛾さんの一挙一動にビクビクとしながら、次の言葉を待つ。
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