第5章 【五条/甘】撫子に口付けを
「ひゃっ……」
不意打ちに声が出てしまう。彼の手が腰から下に滑り、急に私のお尻を掴んだからだ。
僅かに開いた口の隙間から彼に侵入され、戸惑う私の舌に優しく絡んでくる。
ゆるゆると中を探られ、上顎を擦られた気持ち良さに鼻から甘ったるい声が漏れ、意識せずに上半身がピクリと動いてしまった。
舌の付け根を舌先で撫でられて、喉からお腹がザワザワしてくる。悟が角度を変えるとクチッ、クチと水音が響いて、耳から頭も彼に占領される。
キスは初めてではないが、意識を全部悟にもっていかれすぎて息の仕方も忘れた。
彼の胸板を叩くと、やっと気付いてくれたのか糸を引いて唇が離れる。
「……ッは、さと、る、息……」
「ごめん、ごめん……ゆめ大丈夫?」
湿った熱が離れると、少し名残惜しい気もする。ジン、とまだ甘く舌が痺れて口内が落ち着かない。彼の肩に顔を埋めて私が息を整えていると、
「ゆめ、僕の本気伝わった?」
悟の指に髪を梳かれながら、耳打ちされる。
違う。欲しいのはその言葉じゃない。
「……こういう時は好きって言ってよ」
小さい声量で抗議すると、そうだね、と言いながら彼の笑い声が降ってくる。
「ゆめ、好きだよ」
真剣な告白と、ちゅっ、と髪越しに伝わる彼の唇の感触に、また体が疼いてくる。
「まぁ、チャンスは逃したくなかったから、性急に話を進めちゃったけどね」
五条家のいざこざに巻き込むのは気が引けたから迷ってたけど、ゆめは昔から変わらなくてすごく安心したし、君と一緒なら僕も荒んだりせずに、変わらず一生を歩んでいけそうなんだ。
そう言いながら、悟が鼻先を私に擦り付けてくる。
「ゆめ、言うの遅くなったけど……僕と結婚してくれる?」
どこまでも優しく、甘く、耳に響くプロポーズだった。
悟がそんなことをする人ではないと、幼なじみだから分かっていたけど、あまりにも言葉が無くて、五条という家のために愛のない結婚に利用されるのではないかと不安が拭えなかった。
「もし、私が今すぐ結婚するのは嫌だっていったらどうするの?」
「今すぐゆめを押し倒して既成事実作る」
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