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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第5章 【五条/甘】撫子に口付けを




「……正解は、背中を預けられる人」


そう言って、悟が黒い目隠しを取る。

逆光で青い目だけが光っているように見える。
静かな空間で二人の間にしばしの沈黙が訪れる。悟の答えを頭で反芻するが、今一具体性に欠けていて、ピンとこない。


「背中を預けられる……人?」

「そう、自分だけなら僕一人で守れる」


跡継ぎ問題で、幼い頃は毒殺されかけたこともある。赤子のときは、抱えて外に出ようとして上から刃物が落ちてきたことがあると親から聞いた。

親戚もなまじ金があるため厄介で、依頼された暴漢に刺されそうになったこともある。それが五条家だ、とウンザリした様子で彼は頭(かぶり)を振る。

今はだいぶ粛清した、と呟く彼は当主の顔をしていた。


「結婚したら守るものが増えるのに、平気で僕を裏切ったり、背中を刺してくる可能性が少しでもある信頼できない人物とは結婚出来ない。家に帰っても敵かもしれない人物が居たんじゃ休めないでしょ?一人のほうが気楽だよ」

「じゃあ一人でいたらいいじゃない。それが私と結婚するのと何の関係が……」

「再会してからゆめのことをしばらく観察させてもらったし、身辺調査もさせてもらった。
幼なじみで人柄も知ってるし、親同士も顔見知り。ゆめは僕のことを全く疑わないお人好し、大した嘘がつけないし、僕の好きなスイーツ攻めにしても文句言わないどころか一緒に食べてくれるし、なによりお金に執着がない」


最終的にこれ以上の優良物件ないと思ったんだよね、と悟から伝えられ、私は頭に疑問が湧く。名家の跡継ぎの嫁がそんなのでいいのか。そのへんにゴロゴロいそうな条件だ。


「あとは、そうだな……」


おもむろに悟の顔が近づく。


「毎晩、抱けるかどうか、かな」


子作りは大事でしょ?と耳元で囁かれ、頬の体温が急上昇する。屈んだ彼の吐息が首にかかると、思わずビクッと体を固くしてしまった。


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