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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第2章 【パンダ/ほのぼの甘】パンダの王子様



あまりの手触りの良さに、思わずそのままお触りしてしまった。さわさわと、両手で腕全体を撫でてみる。意外と毛質はしっかりしている。

「毎日手入れしてるからな」

それに毎日ファブってるしな、とドヤ顔で返されて思わず吹き出してしまった。

「手入れ!ぬいぐるみみたい!」

「中身はぬいぐるみと同じようなもんだ」

「え」

返答に驚くと、彼は説明してくれた。
夜蛾学長しか作れない特殊な製法で作成する呪骸という存在。その中でもパンダさんは最高傑作の完全自立型の呪骸。だからパンダはパンダじゃない……らしい。

「要するに自分で生活できるお人形さんなんですね」

「ちなみに呪骸だけどメシも食える」

驚くことばかりだ。最近の技術は進んでるのね。感心してると、パンダさんが首からかけたスマホを見て慌てた。

「おっと、そろそろ戻らないとまさみちに怒られる」

じゃあまたな、と急ぎ足で店を後にするパンダさんの背中を見送って放心状態になる。まだまだ知らない世界がありすぎる。

それから定期的に羊毛フェルトやら、人形の目に使うボタンやら、人形に着せる洋服の布やらパンダさんが代理で買いに来るので、自然とお話する機会は多くなった。

「ゆめは偉いなー」

「え、なにが?」

「家を継ぐとか、商売について勉強するとか大変だろ」

「んーまぁ、でもこうしてパンダくんと友達になれたし戻ってきて良かったかな」

パンダくんは優しい。話してると楽しくって、友達になれて良かったと思う。

暇さえあれば遊びに来てくれるようになった。
私が重いものを抱えていると運んでくれるし、万引き犯を発見して捕まえてくれたこともある。ご高齢の婦人が高いところの布を取ろうとしている時にさり気なく手伝ったりと、外見はパンダだけど中身はイケメンだった。



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