第17章 【五条/婚約者ネタ】牡丹に唐獅子、波に兎
私と五条悟は遠い親戚。
五条家の分家の中でも発言権は下の下、そんな我が家に私が生まれた時、久しぶりの無下限呪術使いとして、一族は諸手をあげて大歓迎してくれた。
母が私を抱いた時、涙を流して喜んでいた。
父の誇らしげな笑顔。
親戚たちが次々と我が家を訪れ、「これで安泰だ」と口々に言っていたことも、思い出の動画として残っている。
あの頃は、私が特別だった。
だが、その栄光は僅かしか続かなかった。
本家に六眼を併せ持つ五条悟が生まれた瞬間、私の誕生の栄光は一瞬で霞んでしまった。
誕生日は何ヶ月しか違わないのに、なぜ六眼は私を選んでくれなかったのか。
幼い頃、何度その問いを夜空に向かって叫んだことだろう。
同じ術式の使い手として、何かにつけては比較される日々が始まった。
親戚の集まりに行けば、
「悟様は既に習得したというのに、あなたは……」
「六眼があるとやはり成長速度が違うわね」
「あなたも頑張らないと」
——幼い頃から、そんな言葉ばかりが耳に入ってくる。
私だって努力していた。
血反吐を吐くような思いで術式を磨き、誰よりも早く起き、誰よりも遅くまで修行した。
それでも、六眼を持つ彼との差は開くばかりだった。
御三家である五条家の者は、基本的に呪術高専には通わないはずだった。
それなのに、あの男は高専に入学した。
その知らせを聞いた時、私は密かに安堵したものだ。
これでようやく、顔を合わせずに済む。
比較されずに済む。
自分のペースで成長できる——そう思った。
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