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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第17章 【五条/婚約者ネタ】牡丹に唐獅子、波に兎



だが、高専で無下限呪術の使い手として完全覚醒した五条悟は、もはや敵無しになった。

彼の武勇伝は嫌でも耳に入ってくる。

特級呪霊を単独で祓った。
任務成功率100パーセント。
「呪術界最強」の称号。


一方で、私は着実に力をつけてはいたものの、事あるごとにチラつく彼の影が生活に纏わりつく。


それでも——何かにつけては比較される人生だとしても——極力顔を合わせなければ、私の精神は平穏だった。


アイツが高専を卒業した後、私は主に関西方面の任務を引き受けるようにした。

五条悟は東京に留まることが多かったから、物理的な距離を保つことができた。

年に数回、親戚同士の大きな集まりで顔を合わせる程度。

その時も、私は彼を徹底的に無視した。

視界にも入れない。

話しかけられても最低限の返答しかしない。



それでよかった。それで私の心は守られていた。



五条悟は性格以外はパーフェクトだったので、伴侶候補は山のようにいたし、引く手あまただったらしい。

呪術界の名家の令嬢たちが、彼に見初められようと必死になっていた。

美しく着飾り、教養を身につけ、彼の前で最高の笑顔を見せようとしていた。

しかし、お見合いは全部跳ね除け、嫁に立候補してきた他家の幾人もの美人に夜這いされても彼は勃たなかったとか。


そんな噂が呪術界に広まった時、私は内心で嘲笑った。


ああ、あの男は人間としては欠陥品なのだと。

最強の術師かもしれないが、異性としては役立たずなのだと。

最低な考えだと自覚しつつも、何か一つは私より劣っていて欲しいという願望があった。




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