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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第17章 【五条/婚約者ネタ】牡丹に唐獅子、波に兎




「大丈夫、ダイジョブ。僕、勃たないから。安心して共寝出来るよ」


廊下に響き渡る、あの軽薄な声。

私は振り返りもせず、冷え切った声で言い放った。


「別室に寝るに決まってるでしょ。そのお粗末な伝家の宝刀を呪力強化でもして一人でやってろ」

「僕の下半身、呪具にでもする気?」


背後から聞こえる声には、相変わらず緊張感のかけらもない。

この男は——五条悟は、いつだってこうだ。

どんな状況でも飄々として、まるで世界の全てが自分の思い通りになると信じ切っているような、余裕に満ちた態度。

私の拳が、ぎりぎりと音を立てそうなほど強く握りしめられる。爪が皮膚に食い込んで血が滲む。


「この世で一番、私が嫌いなのは五条悟。二番目は私と禪院家の婚約話を潰したアンタよ。三番目はクソ兄貴に昇級をチラつかせて、私との婚姻届を偽造させたアンタなの!」


怒りで喉の奥が震える。

言葉にすればするほど、自分がどれだけこの男に人生を狂わされたのかが明確になっていく。


「わー、上位僕独占じゃん。そんなに君の心を独占出来てるとか、ラブラブな夫婦の証……」

「いい加減にしろ!」


私は無下限呪術を発動させた。

背後にピッタリと付いてくる悟をブロックする。

彼の指先が私の背に触れる寸前、無限が二人の間を阻んでくれる。

寝室の襖を、渾身の力でピシャリと閉めた。

木の軋む音が、夜の静寂に響く。


一人になった寝室で、私は荒い息を整えようとした。


腹わたが煮えくり返る。

この感情に名前をつけるなら——憎悪、屈辱、そして何より、自分自身への怒りだ。



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