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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第15章 【伏黒/シリアス】六月の泪



授業終了後、私のスマホに表示されるメッセージ。


「私と虎杖は真希さんたちとご飯行くから。伏黒は任務で完徹だったって伊地知さんから聞いてるし、今日は置いてく」


と、隣の野薔薇がスマホ片手にニヤニヤしながら指で私の腕をつついた。

私が恵のことばかり見ていたことに気付いていたのか否か。

彼女の肩越しに見える悠仁も、苦笑しながらこちらを見ていた。


「伏黒、夢野。また明日なー」

「……ああ」


手を振りながら元気に教室を出ていく悠仁に対して、恵は生返事をしていた。顔が向いてる方向は合ってるけど、完全に焦点が合っていない。

そして、最後に教室に残ったのは、私と恵だけ。

夕方の空気は湿気を増し、窓ガラスにうっすら曇りが浮かぶ。静かな空間に、椅子を引く小さな音が響いた。


「ねえ、帰らないの?」


思わず声をかける。恵は机に突っ伏すようにして、額を手の甲で押さえた。


「……ちょっと、頭が痛い」


やっぱり。胸の奥で抱いていた違和感の謎が解ける。


「家入さんのところ、行こう?」

「いや、平気だ。すぐ治る」

「今日のは『平気』じゃないでしょ」


思わず語気が強くなった。

彼の瞳が一瞬だけ私を見て、困ったように揺れる。


「ゆめ……よく分かるな」

「分かるっていうか……いつもの“平気”な感じと違うから、心配だったし……せめて少し休んで」


いつまでも立とうとしない恵に痺れを切らし、私は腕をつかむ。

小さいため息が聞こえた。

恵は観念したように気怠げに立ち上がり、私が進む方へフラフラしながらも歩いてくれる。



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