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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第14章 【虎杖/コミュ提出物】ヘレボルス


狼の如き鋭い牙と爪。

主を護るように立ちはだかる大きな体躯。

体毛に覆われた腕が、しなる触感のように動くそれを掴み、木の呪霊の本体ごと地面に引き倒す。

だが、あちらも抵抗し、力の押し合いが続く。

このまま拮抗状態に突入するならば、新たに鵺を召喚するまで。恵が一歩踏み出した。


「玉犬、呪霊の本体を爪で貫け!」


主の命令を聞き届け、玉犬が腕を振り上げる。しかし、それを察知した戸奈 海がゲラゲラと笑いながらそれを制す。


「近寄れるもんならやってみな!」


その瞬間、地面を突き破った木の根が一斉に伸び、鋭い先端を彼らに向けた。

とっさに防御の構えを取ろうとする玉犬の腕を掠って、恵の身体を貫こうとする。


「くそっ」


舌打ちしながら、恵は玉犬と共にその場から飛び退く。

素早く体勢を立て直すが、地面を抉った根は呪詛師である主人を守るように壁となり立ちはだかる。


「高専の呪術師も大した事ないね」


気づけば無数の樹根が、恵の周囲を隙間なく取り囲んでいた。まるで籠の鳥だ。逃げ場を失った姿に海は嘲笑する。

忌々しい呪術師が絶体絶命のピンチ。さぞかし絶望的な表情をしているかと思い、彼女が闇から姿を現した。

その時だった。


「ツメが甘いな……鵺!」


彼の頭上の空間の隙間を縫うように、鳥影が空を舞う。

パリパリと電気を纏う翼をはためかせ、激しい雷撃音と共に呪詛師目掛けて突進した。


「……ヤバッ!」


咄嗟に木の枝を防御に回すが、鵺の一閃の攻撃は容易くそれを貫き、思わず手で顔を庇った海の身体ごと病棟の壁に激突する。

轟音が鳴り、焦げ臭い煙が漂う。



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