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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第14章 【虎杖/コミュ提出物】ヘレボルス



「……虎杖、夢野さんのところへ行け」


その言葉で、悠仁は察する。

だが、彼らは気付いていた。

呪霊とは異なる呪力の気配が増えた。

この場にもう一人、呪術を扱う人物が居る。

呪詛師だった場合、恵を単独で戦わせていいものか。悠仁が躊躇った、その時だった。


「すべて、俺が片付ける」


落ち着き払った声で恵が宣言する。

同時に、お互い前後に散る。悠仁がゆめの病室へ向かうべく、一気にギアを上げて駆け出した。振り向かないのは仲間を信じる証。

無事に気配が遠ざかったのを背で感じ、恵は気合いを入れるように一呼吸する。

肺さえ凍りそうな冷気。硬化のためか自ら樹氷をまとい始めた呪霊を視界に捉えつつ、その特性を肌で感じていた。


「ははっ、寒そうじゃん!星の女神様があっためてあげようかぁ?」


突如、緊迫した空気を壊すように陽気な声が響く。

聞き覚えがある声に、己の予想通りの展開だと悟った恵は静かに応える。


「やっぱり呪詛師はオマエか、戸奈 海」


彼女の名前を口にすると、フンッと鼻を鳴らす音が暗がりから聞こえた。


「建築会社への訴訟を潰すために、ビル事故の生き残りはすべて始末しろって裏ルートで高額依頼きてんの。呪霊を喰って育つこの子のために餌の女神像置いたのに、邪魔すんなよ」


金のために人の命を容易く奪おうとする腐った性根に反吐が出る。恵の胸の奥で怒りの焔が燃え盛る。

相手が呪霊を操る術式だと想定しながら、構えを解かずに距離を保つ。


「玉犬 渾」


空気を裂く風切り音が鳴るのと同時に、恵の式神が呪霊が振り下ろした枝を受け止めた。




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