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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第14章 【虎杖/コミュ提出物】ヘレボルス


通路は幅広で、やわらかな白を基調としたきれいな院内。

けれど、昼間なのにどこか小暗い空気を漂わせている。


「虎杖、まずは病院の関係者に話を聞くぞ」

「そうだな」


恵の提案で受付に話を通した後、ナースステーションへ向かう。そこでは数人の看護師が忙しなく動き回っている。


「こんちはー!」


よく通る声で悠仁が元気よく挨拶すると、看護師たちは驚いた様子で振り返った。しかしすぐに笑顔を浮かべて会釈する。


「どうかされましたか?」

「あの、ここに入院してる患者さんについて聞きたいんすけど……」


2人の若者を見て訝しむ様子を見せた看護師たちだったが、悠仁の人懐っこそうな笑顔と雰囲気に絆されたのか、快く対応してくれそうな空気を醸し出している。


「院長の依頼で調査に来ました。東京都立呪術高等専門学校の伏黒恵と虎杖悠仁です。夢野 ゆめさんと戸奈 海さんの病室を教えて下さい」


高専生である身分証を提示し、調査依頼書のコピーを渡しながら、恵は丁寧に用件を伝えた。

看護師たちは書類に目を落とし、納得した様子で頷いた。


「院長から連絡があったアレですか?」

「あの2人の……ああ、なるほど」


若い看護師が呟くと、近くにいた年配の女性看護師が手招きした。


「おいで、こっちだよ」


そうして案内されるまま、ナースステーションから離れて廊下を歩いた。

悠仁の脳裏をよぎるのは、入院していた祖父の後ろ姿。

常世に旅立った家族を思い出し、病院独特の空気が懐かしく感じた。追憶と共に鼻を掠めるのは、消毒液のような微かな薬品のニオイ。

胸ポケットから下げた時計を一瞥してから急に早足で歩き出した看護師を追い、やがて病室が並ぶエリアに辿り着く。 

ある一室の前で立ち止まる。


「ここが戸奈さんの病室よ。夢野さんは2つ隣の部屋。寝ている人もいるから、話すときは静かにね」




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