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【呪術廻戦】撫子に口付けを【短編集】

第14章 【虎杖/コミュ提出物】ヘレボルス


目の前の扉には『戸奈 海』と書かれたプレートが付けられている。

看護師が来た道を戻っていくのを確認し、恵は悠仁の方を振り返る。


「戸奈 海は俺が接触する。虎杖は夢野 ゆめの方に行け」

「分かった。なんかあったら連絡くれ」


2人は聞き取る内容の打ち合わせをしてから、それぞれの病室に入った。

夢野 ゆめの病室は個室になっており、室内は清潔感のある白で統一されていたが、どことなく古めかしい空気を帯びた白色だった。

小さな花瓶が置かれており、可愛らしい花が生けられている。ベッドサイドに置かれたテーブルには、栞が挟まれた読みかけの小説が置かれているが、今は閉じられている。


「すいませーん。夢野 ゆめさーん」


明るく挨拶する悠仁に驚いたのか、ベッドに横たわっていた女性が慌てた様子で身を起こす。

儚い雰囲気を持つ少女の瞳が悠仁の姿を捉えた。


「はい、私が夢野ですが……病室のスタッフの人ではないですよね。誰ですか?」


突然の来訪者。警戒するのも無理はない。悠仁もそれは想定済みだ。

補助監督の明から預かった行方不明者の写真を取り出し、夢野 ゆめの元へ近寄った。


「俺、呪術高専の1年生で虎杖 悠仁。看護師さんにも話したんだけど、ちょっと人探ししててさ。話聞いてもいい?」

「人探し……ですか?」


ゆめは訝しげに眉を寄せる。


「そう。この写真に写ってる人、知らない?」


差し出された写真を覗き込むその顔が一瞬強ばったのを、悠仁は見逃さなかった。

けれど、すぐに問い詰めるのは得策じゃない。情報を引き出せるだけ引き出し、後で恵と合流して作戦を立てる。


「知らない……と思います」


ゆめは視線を逸らしたまま答える。




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