第1章 【五条/シリアス】哀情
「……貴男に、私は何ができるかな」
自問自答しても、まだまだ答えは出そうにない。とりあえず泣き止んで鼻水が止まってから家入さんのところへ戻ろう。
「あー朝日……」
あたたかいオレンジ色が闇を消していく。夜空と陽光が混じり合い、青にも紫にも見える絶妙な色合いが生まれた。
柵に頬杖をつき、その色が混じり合う様をしばらく眺めていると、昇る太陽の光が目に染みた。泣きすぎたか、少し目の奥が痛い。
今日も変わらずに日が昇って平等に朝が来る。 皆、今日はどんな朝を迎えているのだろうか。願わくば、心身に傷を負った人たちの苦しみや痛みが少しでも減りますように。そう祈らずにはいられない。
家に帰って悟の部屋着を洗っておいてあげよう。何着もあるくせに、いつも着るのは同じものなんだよね。
良い匂いのシーツとタオルケットも準備してセットしておこう。割と柔軟剤にうるさいんだよね。
温かくて甘いココアが作れるように、牛乳も買っておこう。マシュマロ入れたら喜ぶかな。もしかしたら蜂蜜入れたカフェオレの方がいいって言うかもしれない。
お腹が空いたら何が食べたいって言うかな。材料は一通り買っておこう。
今の私ができるのはそれくらいだ。
暁光を受け、アスファルトに伸びる影を見ながら、私は屋上を後にした。
END.
→あとがき