第12章 【ほのぼの甘】五条先生と夏油先生
意地悪だなぁと思い、私は頬を膨らませつつも、二人の諍いの原因はこれ以上教えてくれなさそうなので諦めざるを得ないようだ。
私が心底残念そうな表情をしたから、五条先生はひとつ溜息を吐く。
「……しょうがないから、教えてあげようかな」
不意に、先生二人が私の隣に立った。そして、私の頭と肩に手を置く。
その動作はあまりにも自然で、私は何の違和感も覚えなかった。ハッと我に返った瞬間、耳のすぐ横で五条先生の声がした。
「どっちが先にゆめの彼氏になるか、勝負してんの」
予想だにしない言葉に、私は思わず「へ?」と気の抜けた声を出してしまう。
「え……それ、どういう……」
「だぁからー、どっちが先にゆめに告白されて彼氏になるかって勝負」
私の頭の上で五条先生がケラケラと笑っている。触れてる箇所から、その振動が伝わってきて少しくすぐったい。
「なんで、そんなことしてるんですか……」
「だって傑のやつ、ずーっと僕に黙ってゆめのこと狙ってたんだもん。知ってる?」
「え、えぇっ?」
驚きの声をあげると、今度は反対側の隣に居た夏油先生が私の肩に回した手に力を込める。
「悟は、前からゆめに隙あらばちょっかい出してるから困ってたんだよ」
「お前だって同じだろ?僕がいない時にこっそりゆめに声かけてたくせに」
「あれは物事を円滑に進めるためのコミュニケーションだよ。悟みたいに、余裕なく下心満載じゃない」
「はぁ?僕だって……まぁ、半分くらいは下心だったけど」
「ほら見ろ。やっぱりあるんじゃないか」
頭上と隣で繰り広げられる二人の言い合いに、私は唖然とするしかない。
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