第1章 幼馴染は契約したい
少年がしばらくして泣き止んだ後、ルーナは持っていたチョコレートをあげる。
「名前は?」
「僕…僕はなんばー…」
「なんばー?」
聞き返すと少年は黙った。
「ううん、僕は名前がまだ無いんだ。孤児で研究所産まれだから」
脅えた声、青ざめた顔。
魔法界では孤児は孤児院か研究所で代わりの親がみつかるまで、名前を付けては貰えない事をルーナは不思議に思っていた。代わりに番号が貰えるけど、ひとつ違いってややこしい。だからか、孤児は皆に受け入れられず少し遠い存在だった。
「勝手に名前付けて呼んでいい?君のこと」
ルーナは何気なく言ったであろう言葉を少年はぽかんと口を開けてあっけらかんな態度で返す。ルーナは少年を上から下まで眺めた。赤い髪に綺麗な青リンゴのような大きな目。
「リンゴとかどうかな」
「…リンゴ?僕の名前が?」
ルーナは苦笑いして、頭を搔く。
「名前のセンスなんて微塵もないけど、君がどうしても林檎みたいに可愛いから」
「…ありがとう」
少年は頬をほんのり赤らめて笑った。
「はっはっは、リンゴなんて素晴らしい名前を貰えて良かったね35君」
その会話を聞いて太陽がルーナ達に向かって顔を向けた。何時も世話焼きの太陽は何時も誰かと話、皆を見ている。
「太陽さん、どうも。僕、初めて誰かから貰ったんだ。えっと…君は」
「ルーナ・クラウディよ」
「ルーナに…」
太陽はリンゴのもじもじした表情ににこやかな笑みを浮かべる。
「それは良かったね、ルーナ君も泣き虫同盟ができて良かった……」
「太陽さん!それはあまり言わない約束だよね」
太陽はハハハと声太に笑ってまた誰かの元へと話に言った。
「…ルーナはよく泣いてるの?」
「ま、まあね…」
苦し紛れに答える
「じゃあ、僕はお返しに君の話し相手になるよ」
ルーナは目を輝かせた。
「本当に?」
友達のいない彼女にとって、それは最高のプレゼントだった。
「そ、そんなに喜ばれたら恥ずかしいや…」
「お友達になってくれるんでしょ!嬉しくないことなんてある?」
「僕も嬉しい……かも」
友達はリンゴにとっても初めてだった。