第1章 幼馴染は契約したい
「ルーナ、またここに来ていい?」
「もちろん」
リンゴは満面の笑みをルーナに向ける。すると近くから足音が聞こえてきた。走る音、こんな道迷いの魔法をかけた場所にまたお客さんだとルーナは自分の魔法で作った空間から顔をひょっこり出してみた。
すると赤毛のつり目の少年と目が合った。少年はルーナを見て青ざめる。空間と切断したような魔法の中は外から見ると頭だけ。体は全て透明だ。
「落ち武者〜〜!!」
「失礼ね」
「な、な、なんだよ!俺は35を探しに来たんだ!!お、お前なんかな…俺の闇魔法で!」
するとひょこっとリンゴが魔法の外に首だけ出す。
「あ、兄さん…」
「…落ち武者、お前、俺の弟まで落ち武者にしたのか……」
泣き出しそうな少年にルーナは意味がわからずにいると、リンゴが違うと笑って話す。
「これね、ルーナの魔法なんだ。ここに部屋みたいに空間ができる魔法」
「空間…?それ俺も中入りたい!」
「理解力高めなんだね……」
ルーナは呆れつつも少年を中に入れてやった。少年はあまりに元気で魔法の中を駆け回った。魔力のコントロールが苦手なルーナは慌てて空間を広げてはぐにゃぐにゃした場所を作って、少年はそのぐにゃぐにゃ道を走り回った。
少年にはリンゴと違って、自分で付けた名前があった。ジャック、そう彼は名乗る。
この気のいい青年はリンゴと二卵性双生児で、性格も顔も全く異なった。ジャックは天才的な才能があったのか、ルーナが苦手な場開け魔法をいとも容易く真似してみせ、ルーナはちょっとばかし羨ましいと考えた。
この3人は何時も一緒にいるようになった。中学に上がると2人は育て親が見つかり、ルーナと同じ中学で過ごすことになった。
それはもう仲の良い3人だった。