第2章 負積の使い魔
そうして、1ヶ月の月日が流れた。アヴァロンへの合格は異例の事態ながらレムを召喚したということで補欠合格になり、その後1人辞退したこと。正確には今回の事件の発端だった犯人が合格者であって、ムルアさんをはじめとする魔法省治安維持部隊の活躍で捕まったのだ。そして私がアヴァロンへの入学が決まった。
「だから、言ったんじゃないですかー、もっと大きな鞄が必要だって」
「そんないっぺんに買いに来るなんて思わないのよ!というか!君の、レムの荷物が多いんじゃないの!!」
「あ、この体わりと苦労するんですよー。ケアしないとすぐ身体が小さくなるし汚れるしー。あ、あと俺この姿じゃ家はもちろん故郷にも帰れないんで、ここで生活するための物は全部買わないとー」
「だからって、主人の私にまで君の物持たせるな!」
「持たせてませんー。本は共有財産ですー」
「本は本当に後日でもいいよね!?」
「さっさと元に戻りたいんで、それらしい本は欲しいですー」
「こんの、ああいえばこういう……!バカレムがあ!」
「貴女様だけには言われたくありませんねー、ノロマへっぽこお転婆女主人様」
「ま、まあまあ、2人とも落ち着きなよ」
「「落ち着けるか!」」
苛立ち殴り合いの喧嘩が始まると、リンゴが止めに入る。私達はリンゴに向かってそう発すると、リンゴは苦笑いを浮かべた。リンゴもまたアヴァリナ学校…アヴァロンのライバル校への進学が決まっていた。2つの学校はどちらも寮制度で、私達は入学準備をしに大きな街のショッピング街道にやってきていた。
「あーあ、リンゴ様の様に話のわかる、賢くて優しいご主人様だったらなー」
私はレムを睨み、はっと鼻で笑って見せた。
「あーあ、リンゴの使い魔みたいに可愛い魔物型がよかったな。気味悪い喋る人形じゃなくて」
「あ?誰のせいでこうなってると思ってんですか」
「誰のせいでこの1ヶ月振り回されてると思ってんのよ」
「だから喧嘩はやめて!!2人とも」
また取っ組み合いになりそうな所をリンゴが引き離す。リンゴにもまた使い魔が出来ていた。
リンゴの使い魔は木の苗のような形をした魔物型の使い魔だった。丸い目がついていて、喋れはしないもののリンゴによく懐いていた。レムと違って、リンゴが呼ぶまで普段は使い魔の世界で生活しているということだ。