第2章 負積の使い魔
「これより試験を行います。今年は50名の一次試験合格者の方々に、召喚魔術を行ってもらいます。ここにいる審査員の方々を多く魅せた人から順に合格となります。」
女がそう言うと、上層から円の様に囲う観客がわっと楽しげな声を上げる。
「なお、不正を防ぐために」
そうしてまた視界が真っ暗になり、手を後ろで縛られる。音も遮断されてしまう。脳裏にだけ、あの女性の声が響く。
「受験者様には拘束魔法を掛けさせていただきます。それでは解かれた方から順に召喚魔術を施して頂きます。召喚した魔法生物は貴女方と主従関係を認めた身、故に持ち帰って頂いてもその場で契約破棄していただいても構いません。」
女はこうも話を続ける。
「勘違いなさらぬよう。これは魔力を測るものでも、技術力を活かすものでもありません。如何に魔法省が欲しがる人材か、如何に光る物を持つ存在か。努力をできる存在か。性質が優れた存在か。この審査員が見極めるのです」
女の言葉はどことなく深みを帯びたものだった。私はそこから何時間と拘束される。忍耐力もまた試されているのだろうか。きっと何らかの呪いで集中力を途切れさせようとしているのかもしれない。
「次はルーナ・クラウディさん。前に」
そう呼ばれて視界が一気に見えるようになる。耳も口も手も動かせることを確認する。この待ち時間でも大分に辛いものがあった。何も見えない、聞こえない、動けない、暗闇で緊張で寝ることも出来ずにいたからだ。
私は円になった壇上の上に上がる。周りは静かにそれを見守るのだった。私は習った召喚の術式を施すために腕を光魔法で小さくきって血を魔法陣に1滴垂らした。
「我が隷属なる者よ、我が血肉に応えこの闇を照らす1柱の礎とし、我が生涯一遍の悔いなし関係を求めんとす。我の栄光なる陰よ、姿を現したまえ」
緊張で噛みそうになりながらも、体は疲れていてスラスラ言葉が出てくる。