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魔法の結婚契約書、破棄させて頂きます

第2章 負積の使い魔


まるで徹夜明けのテストのようだ。1滴ポツンと魔法陣に血液が流れ出ると、魔法陣がふわりと淡い青色に輝いた。そして勢いよく渦を巻く。

「ダメだ!何か不備がある!!」

審査員の1人、私に提案を出したムルアが慌てふためき仮面を投げ捨て立ち上がった。だが誰一人止めようとはしない。さも計算された未来だったというように、いや違う。テンポ遅れて周囲がザワつく音が私にまで届き始めた。

「今すぐにでも中止すべきだ!試験監督」

ムルアに続き、審査員が叫び始める。しかし時は既に遅かった。私はその青い光の渦に飲み込まれてしまった。


尋常でない熱さと引き裂かれそうになる身体に私はどうにかなってしまうのではないかと、恐怖を覚えた。それでも上手く理性を保とうと、思い切り魔力のリミットを外し解き放つと、それに呼応するかのように熱さは増していった。耐えきれず私はそこで視界が真っ暗になるのを感じた。




目覚めてまもなく、さも真っ暗な暗闇が私の視界を占領する。深海に突き落とされているような感覚を味わった。数多の人の声が薄れゆく、揺らめいて聞こえた。そして、男の人影が現れる。男は170以上あるだろうこと、それから姿勢の良さと何処か遠く空を見つめていることしか分からなかった。


「イヤだ」

男の声だろうか、男はそう何に対してなのか分からぬ怒りと悲しみを叫ぶ。

「気持ちわりぃ顔をしてますね」

男の人影を追いかけるように私は歩き出す。男に近付こうとすると、硝子のような何かで壁ができていて通れなかった。男は酷く辛そうだ。

「ねえ、大丈夫?」

私がそう言うとピタリと男は体の動きを止めてしまう。

「大丈夫?なにがです?あー、気分が悪い」

「ここはどこ」

「さあ、貴方の心の海か俺の心の海か……。それより見えない人間に心配…つーか話しかけるなんて変わってますね」

何故か喧嘩を売られているような気がしてムキになりかける。それを何とか止める。

「あの、貴方からは私の姿は」
「真っ黒い人影ですねー」

本当に先程の弱音を吐いていた男か。あまりに棒読みで冷静な声に、逆に私は混乱してしまう。
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